3Dプリンターは、1980年代にアメリカで生まれて以来、自動車や航空機などの試作品の作成に使われてきた。しかし、近年は性能向上や低価格化が進んだおかげで普及が進み、3Dプリンターが急速に市場拡大している。
日本には2年ほど前から、アメリカの2大勢力であるストラタシスと3Dシステムズの3Dプリンター装置が上陸しているが、政府の成長戦略のひとつとして3Dプリンター関連産業への支援措置が検討されていることもあって、ブームが過熱してきているのだ。
3Dプリンターとは、3DCAD/CAMや3DCGなどのコンピュータ上でつくったデータ(設計図)をもとに、ナノ単位で樹脂などの材料を積みあげる方法で簡単に立体を造りだすことができる装置である。
このようなデバイスが実現したことで、これまで金型などから製品や試作品を製造していたのが、パソコン上のデータからすぐに具体的な物体が作成できるようになった。各種メーカーの製造現場では、3Dプリンターの利用によって手軽に複数のアイデアを試作して手にすることができて、開発期間がぐっと短縮されるようになったという。
また営業部門では、顧客に対してパソコン上ではなく実態を手にとって確認してもらえるようになったことで商品説明やプレゼンテーションの質的向上につながり、営業力アップにも貢献しているようだ。
企業だけでなく、個人が3DCADなどの設計ソフトで作ったデータを3Dプリンターで実物にするサービスも始まっている。これからは個人のアイデア次第で、ヒット商品を生みだせるようになるかもしれない。
【 3Dプリンターメーカー 】
3Dプリンターはアメリカ発祥でストラタシスと3Dシステムズが2強とされているが、日本国内では
ナブテスコ(6268)とキーエンス(6861)が高級機種の製造販売をおこなっている。
キーエンス(6861)はFAセンサーなどの検出・計測制御機器が主力だが、高精細3Dプリンターを開発。企業などが導入する前に無料でCADデータから造形してくれるキャンペーンや、3Dプリンターの操作性などのセミナーを開催して市場拡大を図っている。
制御機器メーカーのナブテスコ(6268)子会社のシーメットも、国内の3Dプリンターメーカーの老舗の1社。透明度の高い樹脂にレーザーなどの光をあてて固める手法で試作品などをつくるため、実物に近い試作品をつかって設計図面の改善点を探ることができ、ものづくり現場での性能試験にも役立つようになった。
ローランドの子会社で業務用大型プリンターを手がける
ローランド ディー.ジー.(6789)では、歯科技工用切削加工機などの医療用装置のほかに3Dレーザースキャナなども開発しており、3Dデータの作成から実物の加工までトータルでものづくりをサポートする体制となっている。
なお、経済産業省では次世代3Dプリンターの開発プロジェクトが動き出しており、官民挙げて3Dプリンターの普及を後押ししている。
【 周辺機器、商社、その他 】
3Dプリンターを使用するためには、3Dデータを作成する3DCADや3DCGが必要となる。3Dプリンターで立体をつくるための3Dデータの導入や運用をサポートする企業の存在も、産業の成長には欠かせない。
3Dデータ関連企業としては、プリント基板CAD/CAMの国内最大手である図研(6947)、CAD/CAMの開発を手がける
アンドール(4640)、CAD/CAMソリューションを行っているC&Gシステムズ(6633)などがあげられる。
MUTOHホールディングス(7999)の子会社の武藤工業は、3Dシステムズが製造する3Dプリンター「Projet」シリーズや「CubeX」などの販売代理店となっている。印刷など特殊産業機器の専門商社のアルテック(9972)も、ストラタシスの3Dプリンターの国内販売を展開している。
IT機器の輸入販売を手がける理経(8226)は、アメリカのPTC社の3DCADを輸入販売しており、関連するセミナーなども行っている。
光ディスクや検査装置で最大手のパルステック工業(6894)は、自動車向け非接触3Dスキャナの需要が伸びている。非接触・ノンスプレー方式で形状を正確に計測し、測定データの作成もできるものとなっている。
また、群栄化学工業(4229)が扱っている工業用樹脂が、3Dプリンターで形成する際の材料になることから、急速に注目が集まっている。
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