ヒッグス粒子とは、イギリスの理論物理学者ピーター・ヒッグスが提唱した素粒子の質量の起源における「ヒッグス機構」という理論を裏付ける素粒子のひとつのことを言う。
ほとんどの物質には質量があり、その質量を与えている粒子がヒッグス粒子だと言われている。物質が物質として存在するための理論であり、これを突き詰めていくと宇宙の始まりや命の誕生までが解明される可能性もあるのだ。
ヒッグス氏が1964年に提唱して以来、世界中の科学者たちが研究を続けてきたが、2012年7月についにヒッグス粒子と見られる新粒子が発見された。
これらの研究に使用されているのが、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)という円型の加速器だ。LHCはスイスとフランスの国境付近に設置されており、2008年から稼働し実験が行われている。この研究には1兆円超という莫大な費用が投じられ、世界各国から数万人もの研究者が研究に参加している。
【 大型ハドロン加速器本体 】
ヒッグス粒子の研究は、スイスのジュネーヴ郊外のフランスとの国境付近で行われている。欧州原子核共同研究所(CERN)が素粒子物理学の研究を行っている研究所には、全周27kmの円形加速器・大型ハドロン衝突型加速器が設置されている。加速器内部では、ビッグバン直後と同様の高エネルギー状態を作り出してその中の粒子の動きを観察するという実験が繰り返し行われている。
加速器本体の心臓部にある超電導線材を手掛けているのが、超電線や光ファイバーなどを得意とする古河電気工業(5801)である。徹底的に不純物を取り除いた超電導物質をよりあわせてケーブルにするという高度な技術が、ヒッグス粒子の発見につながったとされている。
超電導線材をコイル状に巻いて超電導磁石にして陽子を加速する実験過程で、線材を極低温に冷やして超電導状態を保つための冷却装置は、IHI(7013)が製造している。JFEスチール(5411)や東芝(6502)は、超電導磁石用の鋼材やコイルを納入している。
【 検出器 】
大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の実験装置のひとつに、ATLAS検出器がある。ATLAS検出器は二本の陽子ビームを中心で衝突させて、衝突時に発生する粒子を精密測定するというもので、高さ22m、全長が44メートルという巨大な円筒形をしている。
ATLAS検出器による実験に使用されている耐放射線光ファイバを製造したのは、電線や光ファイバに強いフジクラ(5803)である。高レベルな放射線環境下でも放射線による劣化や損失を低く抑えられる特殊な設計が功を奏したのだ。
素粒子検出器の心臓部で多く使用される光電子増倍管などのセンサーには、浜松ホトニクス(6965)のセンサーが採用されている。同社の開発した特殊仕様の高感度センサーは、合計2万6000台となっている。
川崎重工業(7012)は、LHC向けにCMS検出器のエンドキャップヨークとATLAS検出器のバレルクライオスタットを納入している。また、樹脂や化学品メーカー大手のクラレ(3405)は、検出部周辺で放射線などを測定する特殊プラスチックファイバーを提供している。