石炭火力発電とは、石炭を燃料にして発電するシステムのこと。
世界的には環境問題により石炭による発電が削減されている中、日本では逆に増加傾向にある。
石炭資源は埋蔵量が多く安定的に供給できるという長所があるが、
温暖化ガスを多量に排出するという難点があることから、これまでは抑制されていた。
近年、日本企業による新技術の導入と環境保全対策を進めた結果、低コストでの発電が実現できたことから、再び注目されるようになってきている。
茂木経済産業大臣は発電効率の高い石炭火力発電所を視察し、国際的な環境保全や日本経済の成長戦略にもなるとして、発電所の輸出を検討すると述べている。
同時に、石炭火力発電所の新設や増設の際に必要な環境への影響を審査する「環境アセスメント」の審査期間の短縮について、環境省は従来より1年ほど短縮する方針を固めている。
今後は、安くて安定供給できる石炭火力発電所が国内外に普及する可能性が広がり、関連企業にも追い風となるだろう。
【 石炭火力発電所 】
J-POWER(9513)は、全国各地に火力発電所を稼働させており、大気汚染物質の排出を抑える技術と高い発電効率で、国内の石炭火力発電設備のトップシェアを誇っている。発電設備の経年劣化に対するメンテナンスによって熱効率の低下を防ぐなど、エネルギー利用効率の維持や向上にも力を入れている。
東京電力(9501)は、割高な原油や石油を削減して石炭火力発電所の能力を増強する方向性を打ち出している。原発停止以後は火力発電に頼っているため、燃料費が前年度より約30%増えるなどの課題を抱えていた。2013年度は石炭火力発電の能力を前年度比54%増やして、石油系燃料を30%以上削減するとしている。
東北電力(9506)は、スイス資源大手のエクストラータとの間で発電用石炭の輸入価格を引き下げることで合意している。中国での石炭需要が減少したことや米国のシェールガス革命により世界的に余剰感が強くなったためだが、日本の電力会社にとっては燃料費調達費の削減に寄与することになる。
【 火力発電プラント機器、発電設備 】
日立製作所(6501)は、子会社の日立パワー・ヨーロッパとともに、ギリシャで最大規模の石炭火力発電所向けの超臨界圧発電設備一式を受注しており、2015年に着工、2019年の営業運転を開始するとしている。日立パワー・ヨーロッパは超臨界圧石炭火力プラントで多くの建設実績を持っており、2012年にもドイツの発電所にボイラーを納入している。
また、日立は三菱重工業(7011)と火力発電システム事業統合を発表している。大型ガスタービンが強みの三菱重工業と、中小型で挑む日立は、ガスタービンや蒸気タービン、周辺機器のボイラーなどを中心に、双方が出資して新会社が2014年に誕生するという。
東芝(6502)は、インドの現地合弁工場で南部のチェンナイで最新型の超臨界圧タービン発電機の生産を行っている。また、13年1月には米GEと火力発電システム事業において合弁会社を設立すると発表している。GEがガスタービンを担当し、東芝は発電プラントの設計、資材調達、建設を担当する。
なお、日立・三菱連合と、東芝・GE連合、それに独シーメンスは、”火力”世界3強と位置づけられている。
【 発電用石炭 】
石炭火力発電に使用される石炭は国内生産が0.5%ほどであるため、圧倒的に海外からの輸入に頼っている。輸入先としてはオーストラリアが約60%、次いでインドネシアが約20%、そのほかロシアやカナダ、中国となっている。
住石ホールディングス(1514)は、オーストラリアやインドネシア、ロシアなど海外から石炭の輸入販売を行っており、同時に海外石炭会社への投資も行っている。国内には石炭物流拠点として福井、新居浜、伊万里、大分に石炭中継基地を運営して迅速な供給を行っている。
三井松島産業(1518)は、オーストラリアでの石炭生産やインドネシア、カナダ、アメリカ、中国などから石炭を輸入して、国内の鉄鋼、電力、その他企業への販売を行っている。
日本コークス工業(3315)もオーストラリアやインドネシア、中国などから石炭を調達して国内企業への供給を行っている。石炭開発から搬送・中継・石炭灰のリサイクルまでをトータルで行っている。