電力小売りを完全自由化する改正電気事業法が成立し、政府主導で電力システム改革が進むこととなった。これまでは地域ごとに電力会社が販売を独占してきたが、今後は発電した電力を一般家庭向けに販売する事業者が増加することが予想される。
法改正の背景には、震災などにより電力供給が不安定となり経済発展の妨げとなった事態がある。これに対して政府は真摯に電力問題に取り組むこととなった。電気の安定供給の確保や電気料金をできるだけ抑制できるようにすることや、消費者が自由に電力事業者を選択できるようにするなどの目的に沿って、2015年から段階的に自由化を進めていく計画を掲げている。
この制度により、一般家庭などの電力消費者はより安定的な供給を期待できる点や電気料金が安い点など目的に応じて電力事業者を自由に選定できることになり、変化に富んだ電力市場が生まれることになるだろう。
関連分野としては、風力・火力・太陽光などの発電事業者や発電システムの技術開発事業者、個人や一般家庭向けの電力設備・機器などを手がける企業を中心に市場拡大が見込まれる。
【 発電・電力小売事業 】
改正電気事業法が成立したことで、エネルギー関連業者や中小の電力事業者が注目されることとなった。すでに太陽光発電や風力発電、バイオマス発電などに新規参入する企業も増加している。
再生可能エネルギー関連企業としては、風力発電やバイオガスを手がける東京ガス(9531)、メガソーラー事業に参入を果たしたソフトバンク(9984)、家庭向け売電専用の発電設備を増設した王子ホールディングス(3861)、自家発電から余剰電力の販売をはじめた大王製紙などがあげられる。
電力消費者向けの省エネ管理サービスなどを提供するエナリス(6079)は、太陽光発電・水力発電・風力発電など再生可能エネルギー事業を展開する日本エネルギー建設を買収し、発電所建設にも乗り出すとして注目されている企業である。
バイオ発電所を運営するファーストエスコ(9514)は、90%以上の高い稼働率を維持して好調な業績を上げている。新規に木質バイオマス発電所を設置するなど積極的にエネルギー事業を展開している。
スマートハウスなど住宅用太陽光発電システムの販売や電力コスト削減のコンサルティングを手がけるグリムス(3150)は、エナリスと包括提携して太陽光発電・売電を協業して推進している。またメガソーラーの建設も進めている。
エスコ事業の草分けである省電舎(1711)は省エネ対策サービスを主軸としているが、太陽光発電やバイオガス発電などの再生可能エネルギー事業にも注力して事業拡大している。
<関連銘柄>
『日本製紙』(3863)
『JXホールディングス』(5020)
【 発電施設関連 】
家庭向け電力を売電するために欠かせないのが、発電施設の技術開発である。火力発電、風力発電、太陽光発電などの大型発電施設の技術のほか、自家用発電機を手がける企業も多い。
三菱重工業(7011)と日立製作所(6501)は火力発電システム分野において事業統合により新会社を設立しており、地熱発電システム事業なども手掛けている。また日立製作所は自家用発電設備の開発・販売も行っている。
東芝(6502)も火力・風力・水力発電や地熱発電などの発電技術を活かして国内外に発電施設を設置している。また電力用変圧器の分野のパイオニアでもあり、現在は世界各国に輸出している。
その他、富士電機(6504)は火力・水力・地熱発電プラント、三菱電機(6503)はタービン発電機、川崎重工業(7012)はガスタービン設備を手がけている。
日立造船(7004)は、廃棄物発電システムやガスタービン、ガス・ディーゼルエンジンなどの発電設備システムのほか、バイオマスからエネルギーを製造する技術の開発も行っている。
【 電力設備・機器関連 】
一般家庭がプランに合わせて電力会社を選べるようになったことで、各家庭で電気使用量をチェックする機器の需要が伸びる可能性が高い。
従来は月に一度、検針員が電力使用量を確定しているが、各家庭で契約する電力事業者が異なる関係で、今後はスマートグリッドなどの通信機能付き電力網を使用したスマートメーター(次世代電力量計)などが普及していくと予想される。
東光高岳(6617)が東芝(6502)と共同出資した子会社の東光東芝メーターシステムズは、東電からの大型受注を視野に入れてスマートメーターの新工場を建設して今後の需要に備えている。
電力量計で国内首位の大崎電気工業(6644)は、スマートメーターや集中自動検針システム、省エネシステムなども手がけており、電力自由化に向けての需要を満たす役割を担っている。同社はスマートグリッド事業に関して日立製作所(6501)と業務提携している。このほか電力量計を手がけているのは、三菱電機(6503)、富士電機(6504)など。
その他、電力変換装置など電力関連機器を多数手がける明電舎(6508)、電力向け小型変圧器で首位のダイヘン(6622)、給湯器やソーラー関連製品などを手がける長府製作所(5946)なども電力自由化の需要を満たす企業としてあげられる。