前の章では、ADRは米国市場において、米国以外の国の企業に株と同じように投資出来る証券であるとお話ししました。
「それは株なのか、違うのならば一体何なのか。」と疑問も浮かんでくるかもしれません。 それでは、どのような仕組みで株式と同じような投資証券になっているのか、順番に見ていきましょう。
■現地の銀行が実際に株式を購入
まず、外国の証券取引所に上場されている企業、仮にAとしましょう、その株式を現地にある銀行が購入します。
この銀行というのは、JPモルガンなどの大手銀行です。仮にX銀行とします。
X銀行は現地において、購入した株式を保管します。
このX銀行のように、現地の企業の株式を購入し、保管する銀行を預託銀行と呼びます。
■預かり証を米国で発行
そして、現地のX銀行が保管しているA企業の株式を裏付けとし、米国のX銀行が預り証を発行します。
この預り証にはA企業の株式の所有権が示されてあります。つまりは、株式と同じ権利を持つということなのです。
この預かり証のことを預託証券と呼び、まさに株式と同じように米国の市場で取引されているのです。
それをADR(米国預託証券)と呼んでいるのです。
■簡単に外国企業へ投資
米国では、自国の株式と同じように簡単に取引出来るということで、ADR市場が発展してきました。
確かに、実際に外国で口座を開設し、現地の株式を購入した場合と比べると、ADRはかなり手軽ですよね。
しかも、外国通貨建てではなく、自国通貨の米ドル建てでの取引ですので、為替相場に気を取られず取引出来るという利点があり、さらに配当金も米ドルでの受け取りなのです。
そのような理由から、ADRは米国投資家に広く受け入れられてきたようです。
■企業にとっても資金調達のチャンス
ADRの利点を受けるのは、投資家だけではありません。
たとえば、新興国の企業が大規模な投資で資金が必要なとき、新規株式を発行したとします。
ADR市場を通してその企業のADRを売れば、自国で売るよりも良い条件で、先進国の投資家から資金の供給を受けることも可能です。
その場合、知名度が上るというおまけまで期待できるかもしれませんね。
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さて次の章では、海外株ADRについて学んでいきましょう!