2017年12月14日に東証1部or 2部市場へ上場する「アルヒ」について概要と期待度を見ていきたいと思います。
アルヒの上場日は!?期待度は?
同社はフラット35を中心とした住宅ローンに特化したモーゲージバンク事業を展開しています。
居住用の一軒家やマンションを購入する際にたいていの方は住宅ローンを借りますが、同社はその「住宅ローン」だけを専門的に扱っています。
住宅ローン市場は年間20兆円の新規貸出が継続的に起きている安定した市場であり、人口減とは言われるものの引き続き高い成長を見込める市場であるといえます。
同社はお客様に融資を実行した後、債権を「証券化」し債権譲渡を行っており、次の融資に向けての資金化と証券から生まれるフィーを受け取る「フィービジネス」に強みを有しておりますので、高い収益性を見込めるといえましょう。
どんなことをしている会社なの?
同社はネット金融機関でトップのSBIホールディングスの元子会社であり、日本初のモーゲージバンク(証券化を資金調達手段とした住宅ローン専門の金融機関)として創業しました。
少子高齢化といわれている日本ですが、住宅ローン市場は毎年20兆円規模で安定推移しており、大きな金融危機等を起きても変動が少ないという点からも安定したビジネスができる市場であるといえます。
同社は住宅ローン専門の金融機関としてローンを直接引き合うことはもちろんですが、お客様のライフステージに合わせた提案ができるよう「ARUHIプラットフォーム」を構築し、事業領域を拡大しています。
同社は「住宅金融支援機構」が金融機関と共同で提供する住宅ローン「フラット35」をメイン商品として扱っております。
フラット35は金融機関が融資した債権を住宅金融支援機構が買い取り、金融市場にて証券化を行ったうえで投資家に売却することで資金を調達することで、相互に資金融通を行うことができる「証券化前提の住宅ローン」です。
特徴として「金利固定」、「返済まで35年」、「保証料が無料」といった点があり、通常の銀行プロパー住宅ローンに比べて条件がやさしいという点が特徴です。
同社はフラット35商品を始め多数の住宅ローン商品をそろえており、多くの方のニーズに合う商品ラインナップを誇ります。
その他メインの住宅ローンに付随するサービスとして、「ARUHI家の検索」や「ARUHI暮らしのサービス」
といった、家を買う前から買った後までをトータルでサポートできるようなWebサービスを展開しています。
同社のビジネスモデルは一般の銀行と異なり、融資した住宅ローン債権を自社で保有せず第三者に証券化した上で譲渡してしまう形を取っているため、貸し倒れ等のバランスシートリスクが低い「フィービジネス」中心の安定したビジネスが可能となっています。
銀行の住宅ローンは顧客にあった商品というよりも「自行が融資実行によって取れる貸し倒れリスク」に合わせた商品や金利を提供する傾向がありますが、同社のようにあくまでも「つなぎ役」に徹することで、より顧客目線の商品案内が可能となるという点では同社への引き合いが増えてくることが想定されます。
現在では販売チャネルとして全国に店舗展開しています。平成29年9月末時点でFC店舗117店舗、直営店が11店舗の計128店舗を有しています。個人の方のネット上での対応が可能な同社ですが、対面による細かいサービスを行っています。
その他不動産会社等への直販部門も有していますので、ALLチャネルを網羅しています。
今後は住宅ローンビジネスに対する同社の知名度向上に努めるべく、Webサイトの充実を通して同社の認知度や利便性へのプライオリティを高めていくようです。
最終的に同社は顧客と自社を繋げるプラットフォームを形成し、「住」を中心とした様々なニーズのマッチングに向けたコンテンツ充実を図っていきたいようです。
同社の創業は2014年となっていますが、源流は2000年に創業したソフトバンク・ファイナンスカード(株)(現SBIホールディングスの子会社)です。同年に同社は「グッドローン(株)」に商号を変更し、国内初のモーゲージバンクとしてビジネスを行っていきました。
2005年に住宅ローンコンサルを行っていたSBIグループ企業を吸収して「SBIモーゲージ(株)」となってから、対面店舗の展開を図っていきました。その後2012年に資金調達力強化を図るためにも成長性を見出した韓国KOSPI市場に上場を果たしました。
その後も日本国内のビジネスは好調であったものの、目論見を立てた韓国市場での事業展開が難しいと判断し、2015年にアメリカの投資会社・カーライルグループが設立した「CSMホールディングス」によって韓国市場で上場されていた株式を全て取得した上で完全子会社となり、韓国市場を上場廃止となりました。
非上場後社名を現社名に変更し、日本国内でのビジネスに集中してきました。沿革には紆余曲折があったものの、同社のビジネス自体は創業以来好調を維持しております。
売上や成長性は?
同社の業績は右肩上がりです。
売上利益ともに右肩上がりとなっております。現法人での決算期が少ないため、業績については大きく言及はできませんが、引き続き概ね好調を推移することが想定されます。
業界を取り巻くトピックスとして大手銀行を中心にプロパー住宅ローンを縮小しているニュースがでておりますが、その点については同社のビジネスへプラスに働くことでしょう。
低金利化の現代において長期的に資金が固まり収益の少ないプロパーローンは、債務の貸し倒れリスクを負う必要もあるため非常に高コストになってしまいます。人件費が一番のコストである銀行にとっては安定した需要のある住宅ローン市場を手放さざるを得ない事態なのです。
今後は同社のような住宅ローン専門の金融機関が引き続き業界を引っ張ってことを考えれば、フラット35取り扱いで7年連続1位を維持している同社は高い成長を期待できるでしょう。
配当政策については、配当性向30~40%を基本として配当を出していく予定です。非上場化となって以降無配としていた同社ですが、親会社カーライルが保有する種類株式に対する配当は支払っていました。しかしながら平成29年9月に一連の政策成果がでたこともあり、1株につき11,340円の配当を実施しています。
また10月13日付けで株式100分割を行っているため、1株「113.4円」の配当を支払ったということになります。想定価格が1,340円となっているため配当利回りは8.5%となってしまいますが、一時的なもののため実際の配当利回りの計算対象とはしにくいです。
仮に前期のEPS91.01円を用いて30%~40%の配当性向であったとすると、想定価格で2.0%~2.7%ほどの配当利回りが期待できます。業績拡大中ではあるものの配当に積極的なため、2.5%~3%前後の配当は期待できるかもしれません。
今回のIPOによって市場より吸収される金額が256億円ほどで、比較的大きな上場となります。直接1部上場の可能性が高く、初値の高騰は見込みにくいです。また今回は公募がゼロの完全エグジット案件のため高い期待はされないでしょう。
大株主を見ると、同社の親会社となるカーライルグループが81%ほどを有しております。今回の上場はカーライルグループの売却案件となります。2位には元親会社のSBIホールディングスが名を連ねており、4位に東京海上のファンド「東京海上メザニン1号投資事業有限責任組合」が含まれています。
今回大株主に対して180日のロックアップ制限がかかっており、総発行株式の5割ほどが売出になります。従って強く売り込まれることは考えにくいですが、初値以降は上値重い展開が予想されます。
売出は筆頭株主の「CJP CSM Holdings, L.P.」の10,015,700株と「東京海上メザニン1号投資事業有限責任組合」の808,500株の2社のみとなっており、完全なファンドのエグジット案件です。カーライルグループは売却後も58%の筆頭株主として維持し続けます。東京海上ファンドは保有株全て売却となります。
過去に西武ホールディングスがカーライルグループによって再建を果たし、株価も堅調に推移していきましたので、同社も同様の期待を持たれる可能性も高いです。
今回の売出は国内外で行う予定であり、国内は10,824,200株、海外(機関投資家のみ)は7,216,100株の配分で予定されています。
どうやって&どこで新規上場銘柄を買えるの?
今回の「アルヒ」の取り扱い証券会社を以下にまとめましたので参考にしてください。
今回は野村證券とみずほ証券、UBS証券の3社が共同主幹事を務めています。筆頭は野村證券ですが大規模な売出しとなります。
同社の株主でもあるSBIホールディングス系列のSBI証券も幹事に名を連ねております。比較的当選確率が高い上場となりますので、SBI証券を中心に申し込むことをおすすめします。
著者のまとめ
2017年12月は上場ラッシュとなっておりますが、その中でも確立したビジネスモデルを有しているのが同社であると言えましょう。
住宅ローン市場は比較的安定した市場であり、業績の大ブレが少ないビジネスを行っている同社であれば安定投資ができる可能性が高いです。
一方でファンドエグジット案件色が高い今回は初値狙いの方には向かないでしょう。しかしながら、同社は1、2年後に大化けしている可能性を持った企業であると思いますので投資する価値は非常に高いです。
短期しか見えない投資家よりも先の大きなリターンを考えられる投資家が攻防するIPOとなるでしょう。
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