2020年12月16日に東証1部市場へ上場する「ローランド」について概要と期待度を見ていきたいと思います。
ローランドの上場日は!?期待度は?
同社は世界的に有名な電子楽器メーカーです。
かつて上場していたものの、MBOによって上場廃止となり、事業再編を経て今回再上場となりました。
今回は同社の概要を通して事業の成長性等分析していきたいと思います。
企業名 |
ローランド |
上場市場 |
東証1部 |
銘柄コード |
7944 |
事業内容 |
電子楽器、電子機器およびそのソフトウェアの製造販売ならびに輸出入 |
所在地 |
静岡県浜松市 |
設立 |
1972年 |
従業員 |
2,450名 |
会社HP |
https://www.roland.com/jp/ |
監査法人 |
太陽 |
上場日 |
2020年12月16日(水) |
主幹事 |
SMBC日興証券 |
BB期間 |
2020年12月1日(火)~2020年12月7日(月) |
価格決定日 |
2020年12月8日(火) |
購入申込期間 |
2020年12月9日(水)~ 2020年12月14日(月) |
どんなことをしている会社なの?
(参照:https://www.roland.com/jp/)
同社は1972年に創業者故・梯(かけはし)郁太郎氏によって設立された電子楽器メーカーです。梯氏は電子楽器の規格「MIDI」の制定等、電子楽器業界では世界的な功績者でした。電子ピアノや電子ドラム、シンセサイザーなど現代の音楽には欠かせない製品を世に生み出してきました。
1989年には上場を果たしたものの、2008年のリーマンショック後の不景気によって、同社高級楽器が軒並み売れず、以後4期連続赤字を出すなど苦しい経営となっていました。そこで、大株主である創業家との対立はあったものの、2014年に米国のアクティビストファンド「タイヨウファンド」の協力の元MBOを実施し上場廃止となりました。
上場廃止後は経営再建に取り組み、上場子会社であった「ローランドDG」の株式を売却し、収益構造の改善に努めていき、今回再上場の目処が立ったため上場する運びとなっています。
同社の事業領域ですが、大きく分けると「鍵盤楽器」、「管打楽器」、「ギター関連機器」、「クリエーション関連機器&サービス」、「映像音響機器」の5種類に分けられます。楽器の中でも「電子楽器」に特化し、電子ドラムやギターエフェクターでは世界トップシェアを獲得しています。
また、同社の地域別売上高を見ると、海外売上比率は85%を超えており、音楽活動が旺盛な海外でのシェアを有していることがわかります。
日本にて再上場となるものの、基本は海外を舞台に事業を行う会社であるといえます。
|
2015年12月期 |
2016年12月期 |
2017年12月期 |
2018年12月期 |
2019年12月期 |
売上高(百万円) |
31,880 |
37,392 |
43,081 |
61,153 |
63,247 |
経常利益(百万円) |
4,889 |
3,497 |
5,863 |
5,169 |
4,726 |
当期純利益(百万円) |
6,847 |
6,256 |
4,065 |
3,048 |
2,629 |
純資産額 (百万円) |
24,747 |
23,651 |
27,453 |
18,522 |
18,227 |
BPS(円) |
23,936 |
26,394 |
30,612 |
693 |
670 |
EPS(円) |
6,626 |
6,068 |
4,542 |
114 |
98 |
自己資本比率(%) |
53.6 |
59.50 |
68.3 |
45.2 |
41.3 |
ROE(%) |
35.2 |
25.9 |
15.9 |
12.5 |
14.4 |
配当性向(%) |
– |
– |
– |
704.3 |
123.5 |
業績は成熟しているものの緩やかな成長はしている印象です。2018年12月期より連結決算となっていますが、売上高は概ね右肩上がりに成長しています。また、利益についてはやや横ばいとなっているものの、米中貿易摩擦の影響等受けたものであり、MBO前には赤字状態を続けていた時期に比べれば収益性は改善しているといえます。
尚、2020年12月期3Q(2020年9月)の売上高は46,321百万円、経常利益は4,816百万円となっており、ややコロナ禍の影響が直撃していますが、前年同期比では成長しているため、順調な成長を見せているといえます。
配当は直近数期で復配しており、上場後は内部留保を確保しつつも最低30%、目標50%の連結総還元性向を目指した配当が予想されています。現時点で配当利回りは3%程度が予想されます。
公募株数 |
総数11,710,000株 |
OA分 |
585,500株 |
発行済み株数 |
27,343,830株 |
想定価格 |
3,260円(100株単位:33万円) |
仮条件 |
2,810円 ~ 3,710円 |
初値予想 |
2,900円 ~ 3,500円 |
想定PER |
約34倍 |
想定PBR |
約5倍 |
配当利回り |
3.1% |
想定時価総額 |
891億円 |
今回の上場にあたっての吸収金額は400億円で、時価総額が891億円と東証1部上場銘柄としては大型案件で、2020年一番のディールサイズです。売出のみであるため公募割れは避けられない状況です。
株主名 |
保有割合 |
ロックアップ |
Taiyo Jupiter Holdings, L.P. |
90.98% |
360日間 |
三木 純一 |
2.04% |
360日間 |
(株)日本カストディ銀行(信託口) |
1.72% |
180日間 |
ローランド社員持株会 |
1.21% |
180日間 |
柳瀬 和也 |
0.89% |
360日間 |
池上 嘉宏 |
0.88% |
360日間 |
ゴードン・レイゾン |
0.45% |
360日間 |
田村 尚之 |
0.34% |
360日間 |
ジェイ・ワナメイカー |
0.27% |
360日間 |
湯川 純郎 |
0.27% |
|
同社の株主構成ですが、MBO時のエンゲージメントファンド「タイヨウファンド」が筆頭株主で、91%を保有する同社のオーナーです。その他、三木社長をはじめ、役員・従業員で株主が構成されています。
今回の売出はタイヨウファンドのみで、1,171万株の売出です。尚、売出後もタイヨウファンドは同社株の52%を有するオーナーとして、同社へ強い関与を続けます。
今回は公募を実施せず、100%エグジットとなります。
尚、大株主には360日および180日のロックアップがかかっており、既存株主によるエグジットリスクは少ないIPOですが、浮動株が発行株式総数の約半数となるため、大きく株価が動く可能性が高いです。
今回は売出のみのエグジット案件で、市場の評価は再上場案件ということもあり厳しいでしょう。
どうやって&どこで新規上場銘柄を買えるの?
今回の「ローランド」の取り扱い証券会社を以下にまとめましたので参考にしてください。
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割当率 |
株数 |
共同主幹事 |
SMBC日興証券 |
56.22% |
2,781,600株 |
UBS証券 |
13.55% |
670,600株 |
|
幹事 |
野村證券 |
20.44% |
1,011,500株 |
松井証券 |
4.44% |
219,900株 |
|
楽天証券 |
3.56% |
175,900株 |
|
SBI証券 |
0.89% |
44,000株 |
|
マネックス証券 |
0.89% |
44,000株 |
今回の主幹事は国内外の売出が予定されており、国内はSMBC日興証券、海外はUBS証券が共同で主幹事を務めます。その他野村證券を含む5社が幹事を務めます。
著者のまとめ
12月16日には他2社同時上場となるなど公募割れは避けられない状況ですが、足元の業績は堅調に推移しています。もし投資を行うのであれば上場後の値動きを踏まえてからでも遅くないでしょう。